日和ってる奴はだいたい友達 23

日和ってる奴はだいたい友達 23

 

ー 和歌山県 ー 美月家が所有する土地の山の中腹にある宿舎として使用する建物の前にやってきた、山の麓あたりには裏防衛省の作業場がある場所で美月家桜時家の祖父母が住んでいるエリアでもある、山も海もありトレーニングにはもってこいの場所だ

 

荷物を下ろしながら海空が空海に疑問だったことを問う

空海先輩、藤堂さんが筋トレとかもするって言ってたんだけどさ、魔法に筋肉って必要?関係あんの?」

「筋肉と体幹があれば大概のことできんじゃねえの」

荷物を運びやすいように振り分け作業していた最澄が荷物の間から顔を覗かせる

「フィジカル強化は絶対必要でしょ、でもなぁ、また話すけどさ、俺達、魔法が謎なんだよね…とりあえず迅速に運んでよ、終わんないよ」

「「うす」」

荷物を持っていこうと体勢を直そうとしているとざわざわと人の声が聞こえてきた、袴姿の人やジャージ姿の人が荷物の前に集まってきた、(コンニチハー、俺達も運びいれます)悠一郎が声をかけていた神社の人達らしかった、荷物の振り分けをしていた最澄が(お願いします)と言って指示を出した、ずっと人が使っていなかった建物だったため物がなく、持ってきた荷物の量もかなり多かったが人手が増えた分どんどん荷物は無くなっていく

「「お疲れー」」

ドリンクをいっぱい入れた袋を持って優弦と明澄が海空のところへやってきた

「おー、何の手伝いだったんだ?」

「俺、メシ作ってる、もう食えるよ」

「僕は陵介さんと近くの作業場を使えるようにしてる」

最澄がドリンクを受けとりながら疲れたなという顔をする

「まあ、でももう終わりそうで良かったよ」

晴明と空海がドリンクをもらおうと近付いてきた

他のことをしていた夏向も駆け寄って来た

「皆、お疲れ様、食べたり飲んだり休憩してよ?」

「「「「「「お疲れー」」」」」」

(そうだ)夏向はきょろきょろして誰かをロックオンして呼びにいった、数人に声をかけ、皆の前に戻ってきた、老夫婦2組と20代後半くらいの男性2人を連れている

「紹介するね、こっちから、ウチの碧(あお)じい、りおばあ、陵介んちのハルじい、みかばあ、陵介の上のお兄さん浬久(りく)兄、は、美月神社を管理してくれてる、下のお兄さん蓮(れん)兄は桜時神社を管理してる、じいじ、ばあばや神社の人達もいろいろ協力してくれてるんだよ」

「「「「「「しあす!」」」」」」

あちこちから(よろしくね)と返事が返ってくる

あちこち手伝っていた陵介が冷蔵庫設置したから買い出しも必要だと寄ってきた

人手も増えたところで荷解きや買い出しに別れて作業を再開する、宿舎と陵介の作業場があるエリアは山の中間くらいに位置しヘリが着陸したのは山のてっぺん付近にある美月神社の敷地内だ、車で荷物を宿舎前まで輸送しては下ろす、を繰り返していた

「ちょっと待てえぇええ!なんだそれはああぁあああ!」

「「「また、あいつかよ、マジうっるせえなっ」」」

かくりよ組の3人は天星がまたなんか怒こってんのかよとうんざり気味にもう振り向かなかった

空には化保護猫のタコくんといっちゃんがストーンをいっぱい詰めたバックパックを背負って運ぶ手伝いをしていた

「夏向あぁー、化け猫飛んでっし、ついてきてんじゃねえか!お前知ってたのか?」

何やら怒っている兄のもとへ駆け寄る

「兄さんのヘリにくっついてるな、とは思ってましたけど、報告が必要でしたか?」

「住民の皆さんが驚かれるだろうが、ウチはただでさえちょっと怪しい集団なんだぞ、あんなでっかい猫が飛んでたらまずいだろう?」

「…うーん、かわいいネコちゃんねって言ってくれましたよ?ウチと関わり深い土地だからですかね…」

最澄に夏向のとこに持って行ってと言われて猫達が夏向と天星に近寄ってきた

グルグルゴロゴロ言いながらいっちゃんが夏向に頭突きしてくる、タコくんは天星に頭突きをして右から左に往復して顔を擦り付けてくる

「ぶぶっ、まっ…、ぶふっ、いま顔サイズでかいって、ばっ…」

夏向はいっちゃんのバックパックを外す

「ありがとう、いっちゃん、兄さん、もふもふ遊んでないで背中の荷物おろしてあげてください」

天星はクリームパンのようなお手々で抱きしめられながら納得いかなそうだ

「ええ?俺?遊んでねえし違うだろクソっ肉球をどけろ、ぷにっとすんな、はなせよ荷物おろせないだろ!」

右のショルダーを外そうとすれば右手を少し上げ、左側を外そうとすれば左手を上げる、外しやすいように動いてくれた、バックパックをおろすと両手を揃えて座りシュルシュルと普通サイズに戻った

〈 クッソ!クソっクソっ、、なんなんだよこのクソかわいい生き物はよ?心臓が持たねえ、崩れ落ちねえでいるのがやっとだ、とっ、尊いいいっ クソ 〉

兄の背中が甘い雰囲気だったのでもう怒ってないようだと夏向は早々に作業に戻ろうとしたが兄が呼び止めた

「こっちでのこいつらの寝床はどうなってる」

少し振り返って

「兄さんが用意してあげては?この子達、兄さんにお願いしたいみたいですよ」

「そ、そうか」

そう答えておけば自分達が用意するより遥かに立派な寝床になるであろうことを夏向は知っている

〈昔からそう〉

少しずるいかなと思いつつも時々利用してしまうのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日和ってる奴はだいたい友達 22

日和ってる奴はだいたい友達 22

 

防衛省に到着したとき合宿の荷物の積込は半分ほど終わっていた、かくりよ組も手伝いをしておりついた早々ヤジを飛ばしてきた

晴明が(ああん?)と意地悪く笑いながらからかう

「おせぇよ、夜更かししてんなよ」

空海は荷物の上に頬杖ついて呆れている

「せっかく一緒に飛んでやろうと思ったのに寝不足だからダメだってよ」

「「「えええ、マジか」」」

0世界は魔法圏ではない、裏防衛省の本部がある京都は現在侵略者対策で無許可で能力者や化け保護猫が飛べるが他県は飛行許可が必要だ今日の移動に合わせ関西圏すべてに許可を取り久々に飛べる予定だったのだ、だが寝不足の体を気遣って悠一郎がNGを出した

最澄はなだめるような表情でため息をついた

「たいしたことないのにって思うかもしれないけど何かあったら皆が傷つくだろ、君達も止めなかった人もね、そこは解ってあげなよ?」

(そうかもな…)とシュンとしている少年達に夏向が元気づける

「でも、ほらヘリも楽しいかもよ?初めて乗るでしょ?藤堂さんと兄さんのヘリどっちで行く?」

「「「藤堂さん」」」

天星が(その即答ナニ?理由いえや)とにらんでいたが少年達はめんどくさいので荷物で顔を隠して残りの作業を手伝った

 

だいたいこれで終わりかというところで水を飲んでいた海空が近くにいた藤堂に声をかけた

「そういえばどんなとこ行くんだ?聞いてなかったわ」

(ん、こんなとこ)最終チェックをしていたタブレットで画像を出した

和歌山県だよ、BMODの作業場があって美月家桜時家のじいちゃんばあちゃんもいる町だね、凄いいいとこ、山、海、ほら最近改築した体育館もある、良いだろバスケもできるぞ」

〈〈〈〈〈〈 おおおー 〉〉〉〉〉〉

藤堂の近くにいた者達は肩越しに画像を見て喜んだ

荷物の反対側から夏向と陵介が頬杖ついて話を聞きながら思い出し笑いしていた

「藤堂さん、鼻から牛乳出したの思い出しません?」

藤堂は〈あれな〉という顔で表情を緩めた

「あっははは、あったな改築前のイベントな、あれはヤバかったわ」

明澄と優弦も水分を取りながら荷物に体を預けた

「なんの話ですか?」

(あれな?)と皆も集まっていた

陵介がだらしなく荷物の上にもたれ両腕を滑らせながら

「年明けすぐくらいかな、改装前に建物少々汚してもいいしってBMODの名目忘れたけどイベントすることになってさ、皆忙しかったのもあって空海さんに企画頼んだんだ、そしたら「口に牛乳含んで笑うな」ってイベントになっててクジで笑ってはいけないチームと笑かしにくチームになって開催されたんだけど、どっちになってもバツゲームだった、もう超苦行」

優弦が首をかしげた

「んー、笑かす係が当たりな気がするけど違うのか?」

夏向が自分を指差しながら

「これ、あくまで俺目線だけど笑っちゃいけないほうで良かったと思った、こらえきれなくて笑いまくったんだけどここら辺だけで済んだから」

そう言って鼻のあたりから胸のあたりを人差し指で円を描いた

海空がなるほどと

「あー、なる、笑われた側は広範囲に牛乳を浴びるってことか?」

晴明が思い出して鼻息を荒くする

「そだよ、俺と最ちゃん笑かしにいくチームで地獄よ?笑った奴の牛乳全身にガンガン浴びるしさー、最ちゃんは「吹き出すな飲めやあぁああーっ」てらしくもなく怒こり出すし、でも一番納得いかなかったのは空海の一人勝ちだぜ、こいつ1人だけ笑わなかったんだよな、言い出しっぺのクセに無傷じゃん、イラッときたわ」

そうだと言わんばかりに最澄が拳を握った

「しかも「なぁ、笑わせてくれよ、お前らがつまんねーから牛乳がぬるくなっちまった」って涼しいドヤ顔みた時、マジ苦行っ、わざとドヤしたでしょなんかそういうとこあるよね」

陵介も同意した

「そーそー空海さんのドヤ顔がムダにイケメンで牛乳臭い自分が悲しくなったんだよなぁ」

「思い出し怒りすんなよ、あんときもムカつかれてよー、皆にケツ蹴られたんだよなー、くーかいなのになぁー俺」

最澄と晴明が(コノヤロ)と膝でぼふっぼふっとお尻を蹴ろうとする、空海はごめんってと笑いながら側にいた優弦を盾にした

クスクスと笑っているところへ軽く走ってくる足音が聞こえ皆その方向を見ると悠一郎が大きな冷蔵ボックスをかかえていた

「向こうでも多少用意してるけど、到着してもいろいろやることあるから食料も持ってったほうがいいかと思って、だいたいこんなもんかな?」

(あ、そだ)明澄が悠一郎に駆け寄る

「おじさん、行く前に確認しておきたいことがあって、BMODで魔法のような能力がある人いれば、どんな力があるのか知りたいんです、アイテム製作の参考にしたくて」

「あ、それなら、陵介、PC開ける?俺んとこアクセスして」

それを耳にした詩音がスマホを操作する(ヒナリー?ちょっとこっち来て…あ、肉持ってこっちきてんのね、OK)

悠一郎が陵介の横に立ってPWを片手で入力して画面上の表を目線で追った(これだね…)明澄の方に目線を移し

「こっちの世界はそういう力ない人のほうが多いでしょ、まあウチは死んでる人相手にしたりちょっと変わってるから入社する時に一応確認してるんだ、ほとんどいないんだけど…ヒーリングできる人が何人かって感じかな…あと第6感っていうのかな…」

藤堂が手を挙げて

「俺もそうです、ちょっと和らげる程度ですけどヒーラー的な」

それを聞いて明澄がスマホにメモる

悠一郎と陵介はデータをスクロールしつつ確認している

「えっと、、どっちかって言うと「私、オバケ見えます」的な人ばっかりだけどヒーリング能力は藤堂くんと同じくらいのレベルの人があと7人いるね、変わり種は美凪くんのスキャン能力とか詩音の…」

悠一郎はそう言いながらPCに向かう中腰の姿勢から詩音を見上げた

詩音は少し恥ずかしそうに

「バカ力というか怪力?があるんだ私、通常時がそれなの、子供の頃は加減がコントロール難しかったけど今は意識しなくても加減できてるかな、陵介を抱きしめる時は手元が狂っちゃうんだけど」

〈 抱きしめられてませんっ! 〉

陵介がほんとにやめてくれという目線を送った(誤解されるだろうが、そういうこと言うなマジで)怒るぞと手で制止した

 

明澄はフムフムと興味深げにスマホにメモを取り続けた

「例えが難しいとは思いますが詩音さんどのくらいの力ですか?」

「うーん、コイン半分に潰せるとか、あ、このヘリは普通に片手で押せる、のと、、殴るとコンクリートボコれるかな」

(((((((( いや、驚くわ…かなりのもんじゃね? ))))))))

詩音に呼ばれた朝日奈が手を振りながら冷凍肉を持ってやってきた

「詩音パイセン、何すか?あ、これ持っていってもらう肉っす、どこ入れます?」

「ヒナリー、自分の能力のこと話してだって?」

藤堂が開けてくれた冷凍ボックスに肉を納めながら皆の顔をさらっと見回す

「マジっすか?、誰よりもクソっすよ、ショボすぎてガッカリする準備は抜かりない感じで了承?」

朝日奈はまわりをもう一度見回した

どんな爆撃も大丈夫だという顔で皆、朝日奈を見返した

……

「人を、思う方向に向かせることができるっす…1日にせいぜい2回くらいっすけど」

(うん、、確かにショボい…)という空気がその場を支配した

海空は珍しさというか共感できる部分があり

「俺も瞬間移動できるんだけどさ、日に1、2回くらいなんだよ、回数制限あるとマジ使えねえよな、下手すると戻れねえの、ぼっち限定で瞬で行きてえとこあんまねえし」

明澄がメモしながらはっとして

「そう言えばそうだったね、海空の瞬間移動、全然使わないもんねえ?忘れてたよ」

優弦も(そう言えばな)と思いながら朝日奈のほうを向いた

「ところで朝日奈さんさあ、そのチカラ役にたったことあんの?」

問題はそこである、役にたたなそうだとそこにいた大人枠とされる人達は聞いていいのかためらわれた質問だ

朝日奈は首が落ちそうなくらい首をかしげ(うーん)と言いながら腕組みをして記憶を探った

「学生の頃、友達が好きな人を振り向かせたいって言うから、前を歩いてた彼を、こっち向かせてあげたことくらいっすかねー」

〈〈〈 それって振り向かせる意味あってる? 〉〉〉

明澄はスマホにまたメモをしながら悠一郎に言った

「チカラが役立つかは別として、そういう人のほうがアイテム使用できるまでのスピードは0の人よりは段違いに速いと思うんですよね、使用時に必要な強い集中するチカラも無意識に出してるはずですし、ストーン使うスイッチはそれありきですから」

悠一郎は顎に手を添えながらなるほどと再度PCの画面に視線を落とした

「そうだね、朝日奈さんのチカラだって自分の首じゃなくて他人の首を振り向かせるんだもの、意識してなくても相当な集中力なんだね、改めてみんなの異能確認再度してみるよ、少しでもあるよって人から先にどんどんアイテムサンプルできたら試していってもらおうね」

夏向と陵介も頷く、夏向は自分が異能使用時はどうなのか思い出そうとしながら一応自分達のことも申告した

「いまのところあとは、、俺と陵介は前に言ったとおり、あ、そうだ、そういう力じゃないけど姉と朝日奈さんは体術にかなり長けているよ、他の人も前線に出る職員は時間作って毎日訓練はしてるんだけど特に2人は凄いっていうか」

明澄はスマホから顔を上げて

「たとえば相手が魔法無しなら多少やりあえるということですか?」

夏向は指で頭をかきながら少しうーんという表情で

「そうだね、、2人は可能性あるかな…他の人達はもとが戦い慣れてない人達だからね、どう答えるべきか迷うよ、本格的に取り組んでくれてる人もいるし、美凪くん開発のバトルゴーグル着けて実戦に近いトレーニングは多少できてると思うんだけど、現実には怖さも違うしね」

(そっか、最初はやっぱりあれかな)と明澄はアイテムを想像して呟き

「時間とってもらってありがとうございました、詩音さん、朝日奈さん、アイテムサンプルできたら試してもらっていいですか?」

「「もっちろん」」

詩音と朝日奈は居残り皆を見送った

 

 

 

 

 

日和ってる奴はだいたい友達 20

日和ってる奴はだいたい友達 20

 

じゃんけんに負けてみんなの分のサンドイッチとコーヒーを買って後から来た優弦が部屋に入ろうとして躊躇した、天星の怒鳴り声が聞こえたからだ

「0か100しかねえのか?おめえらガキかコノヤロウ、一気に電池切れしやがってからに、特に夏向と陵介、一緒んなってへばってんじゃねえっつの」

ドアわきで面倒くさそうな空気を感じ取った優弦はそっとその場を離れ藤堂が働くエリアに向かった、藤堂が座る席横のキャビネットにテイクアウトトレーを置いた

藤堂が気づいて顔を上げた

「おはよ、他の奴らはどした?」

優弦はトレーを指した

「おはよ、俺だけカイザー寄ってサンドイッチとコーヒー買ってたから、藤堂さんの分もあるよ」

藤堂は(お、サンキュ)と言って立ち上がってサンドイッチとコーヒーをとってキャビネットをテーブル代わりにしコーヒーに少しミルクを入れた

「あ、もしかして他の奴ら天星に怒こられてた?」

「うん、怒鳴り声が聞こえたからこっちきた、迷惑かけたっぽいな、わりい、チラっと聞こえたんだけど夏向さんと陵介さんもぶっ倒れたのか?」

「そーそー」

そういいながらスマホの写真を見せた、詩音にお姫様抱っこされた陵介と雑に運ばれてる自分達が写っていた

「ふはっ、まさか全員でへばってるとはな」

 

昨日の午後、体力を測る目的もあって裏防衛省敷地内倉庫のバスケットコートで試合をすることになった、うつしよの少年達と夏向、陵介、天星、藤堂がバスケ経験者だったこと、夏向、陵介はインターハイウインターカップ優勝経験があることを聞いていた少年達は一緒にプレイしたいと頼んでおり早速その機会がやってきたのだった、そして、うつしよ組(夏向、陵介、海空、優弦、明澄 ) VS かくりよ組(空海、晴明、最澄、天星、藤堂)で行うこととなったのだが、うつしよ組はエネルギー枯渇により第4Q残り1分30秒ほどのところでバタバタと倒れてしまったのだ

 

藤堂はキャビネットに肘をつきコーヒーを飲みながら昨日のゲームを思い出した

「もー、お前ら強さが反則、ゾーンどころじゃねえのな、5人とも容赦ねえし、3Pラインダンクとか普通にやるし、なんか天使の微笑みで悪魔のようなダンク何度もぶちかまされるし、途中から観戦状態だったわ俺」

「チーム全員があーゆう波動ってないからすげえ気持ちよかった、特に海空はずっと本気でプレイできてなかったから楽しそうで良かったよ」

「ん?手抜いてたの?なんで?」

「そういうんじゃないんだけど、向こう(5世界)は魔法NGのスポーツって人気なくて部員少ないからさ、子供の頃も中学ん時も海空は早くからキャプテンやっててゲームメイクに気を使ってたんだよ、藤堂さんが言ったみたいに他のメンバーが観戦状態にならないようにしてたっていうか、俺と明澄は好きにプレイさせてくれてたんだけどさ、今回は夏向さんも陵介さんも最初から魂上がってたから気遣い必要なしでやれたんだ」

「あー、確かにな、俺らも空海さん達が覚醒?完全にスイッチ入った第2Q途中から俺と天星ボールほぼ触れてねえもんなぁ、手え出せなかった、まったくついていけなかったからな、部活でそうだとつまんなくなって辞める奴いそうだもんな」

優弦はコーヒーカップの蓋の吸い込み口を確認しながら眉をハの字にした

「でしょ?人数いないと、数少ない試合にも出らんないしね」

「そういう意味じゃ夏向も高校時代気を使ってたのかなぁ、昨日のほうが容赦なかったし楽しさが全開だったなあいつ」

少し遠くからワイワイと話声が聞こえてきた、まだしつこく小言を言っている天星の声も近付いてくる

海空が優弦に気がついてハイタッチした

「あ、優弦こっちに逃げてたんだな正解っ、聞けよ先輩達ずるいんだぜバスケの時さ具現化の応用でスタイル寄せできるらしくてNBA選手寄せでプレイしてたんだぜ、空海先輩はステフィン・カリー、最澄先輩はレブロン・ジェームズ、晴明先輩はディアンジェロラッセルだって強ええはずだよな」

空海がなに言ってんだって顔をしている

「寄せても自分が混ざるから仕上がりは別者100にはなんねえよ、それにあのまま最後までやってもお前ら勝ってただろうが、第1、2Qでえげつねえ点差にしやがってよ」

晴明が口を尖らせた

「もう少し早く自分のもんにできて完成度があがってればなー、悔しっ、次は頭から容赦しねえ」

最澄も悔しそうだ

「動画ももっと見とけばよかった、でも楽しかったな、またやろうよ」

明澄が真面目な顔で

「悔しがってますけど、へばったので僕たちの敗けですよ?」

あっ!と海空が好奇心いっぱいの表情で

「ちなみにサッカーだったら誰寄せするんだ?興味あるんだが?」

最澄が取られないぞと言わんばかりに素早く答えた

「三笘 薫選手寄せでいかせてもらうよ」

「ああっ、そこいかれた、最ちゃん早ええよ、んーメッシ選手で」

「じゃあ俺はクリスティアーノ・ロナウド選手でいこうかな」

みんなの顔がこれは楽しいゲームになりそうだという表情になった

空海が天星のほうを見て不敵に笑った

「よーし、のってきた今度サッカーもやろう、あ、藤堂はこっちな、天星お前はあと10人揃えろゲームしようぜ」

天星は勘弁してくれという表情で顔を押さえた

「ちょっと待てえ、そんな高次元でプレイする奴ばっかいる化物チーム相手にしろっていうのかよ?脳ミソ鬼でできてんのか?このやろう、ってかなんで俺だけ敵だよ?」

夏向がにっこりと微笑んだ

「兄さん大丈夫ですよ?俺サッカーは授業でやったことあるってくらいですから」

他の皆も俺もだと頷いた

「イヤイヤイヤ、そうだとしても騙されねえよ、俺は知ってる、いざやるとなると絶対えげつねえレベルの仕上がりにしてくることをよ、夏向だけじゃねえ、お前ら全員そういう匂いがプンプンしてんだよ」

晴明が(あれっ)と空海のほうをみた

空海、控えも欲しいし人数たりないよ、あと誰かいるかな」

空海は心当たりのある顔だ

美凪平安神宮のとこで蹴鞠やってる幽霊の麿眉くん3人いるじゃん誘おうぜ」

「いいじゃん、マロくん達、具現化可能だよな、たぶん」

天星が仁王立ちになっている

「どいつもこいつも人の話を聞かねえな、勝手に話進めんじゃねえよ、、あん、待てよ、表の防衛省のサッカー部にこのメンバーぶつけてボッコボコってのもありか、、」

それをみて藤堂が注意した

「おい、悪い顔になってるぞ?、、そうだ皆うつしよ組の魔法習得に協力するトレーニング合宿の準備、手伝いよろしく、俺フィジカルトレーナーの資格もあることだし一緒に行ってサポートすることになってるから、空海さん達の話聞いてるとフィジカルも大事みたいだからガチ部活合宿みたいになると思う」

未だ納得いかない天星をよそに皆、はーいと返事を返した

 

日和ってる奴はだいたい友達 21

日和ってる奴はだいたい友達 21

 

天星は目覚めた時、しばらく天井を見つめた、、(どっちだ…)細く息をはいた、ここのところ毎日のようにやってくる侵略者の対策におわれ、ずっと職場の仮眠室で寝ていたのだ家なのか職場なのか一瞬迷ってしまった、(ダリぃ)ゆっくりと起き上がりクローゼットの前に立った(職場に置いてあったスーツクリーニングに出したんだっけ、持っていかないとか)あくびをしながら着替えてリビングダイニングに向かった

「「おはよう」」

天星に気づき先に起きていた父、悠一郎と母の天音が朝食をとりながら声をかける

「おはよ、家の朝、久々な気がする…うわ、テーブルのうえ、朝メシの量じゃねえくらいのってんな?」

野田が汁物をわきに置いて微笑んだ

「育ち盛りがいますからね」

「そうだったな」

野田は汁物を配り終えたトレーをキッチンカウンターにおき、化保護猫シェルターも兼ねた屋根付きウッドデッキに猫のご飯を用意して何処というわけでもなく少し声を張って呼んだ

「いっちゃーん、タコくーん、ごはんだよーっ、皆にも伝えてー」

米を口に運びながら天星が(うん?)と怪訝な顔をした

「いっちゃん?タコくん?そんな奴ウチにいたっけ?」

食卓に座っていた3人の足に柔らかく激突してくる複数の生き物に気がついた

(ふふ、きたね)野田が3人の足元を見ながら説明した

「このハチワレの子が、いっちゃん、天星さんの足元にいる子がタコくんです、この子達に言うと他の猫ちゃん達にも伝えてくれるんですよ」

天星も悠一郎も驚いている

「この化け猫ちゃん達コミュニケとれんの?ムリなんだと思ってた」

「5世界の少年達が来てからですかね、言ってることがよくわかるのはいっちゃんとタコくんですけど他の子達も表情が出てきてます、甘えるようになりましたし」

天星は足元を見て首をかしげた

「こいつ、なんでタコなんだ?」

「海空くんが言うには、この子だけしっぽが8つに割れてるらしいですよ、他の子は5つみたいですね」

ネーミングセンスを哀れに思いながらタコくんを撫でた

「猫的にはタコでいいのかよ、ん?」

タコくんはグレーと白のボーダーのポムポムのしっぽを扇のように広げてみせた

「あはっ、なんでドヤ顔なんだよ、、うん、かっこいいぞ」

悠一郎と天音は猫達を撫でながら思わず笑った

「きっとあの子達もそんな風にいっぱい話して褒めたんじゃないかな?嬉しそうじゃないか、徐々にでも成仏してくれるといいね」

猫で両親がいることを一瞬忘れた天星は少し赤くなった

 

廊下から賑やかな声がだんだん近付いてくる

〈 もう、なかなか起きないから 〉

「「「おはよー」」」

続いて夏向と陵介もリビングダイニングに入ってくる

「「おはようございます」」

「「「おはよ」」」

海空がキッチンの野田に声をかけた

「野田さん、ごめんコーヒーもらっていい?俺ら藤堂さんの手伝いであんま時間なさげだから」

それを聞いた悠一郎が席を立った

「合宿の荷物の積込?俺が代わりに行くよ、皆朝ごはんちゃんと食べてね、ゆっくりでいいよ」

天星も席を立った

「親父、俺も行くよ、お前らちゃんと食え、メシに手えぬくな大事だぞ」

天音も時間を見て席を立った

「私もでなきゃ、悠一郎さん、皆の体調に変化があればいつでもリープブレス借りて即行くからって藤堂くんに伝えて置いて」

「OK、忙しいだろうけど宜しく頼むね」

天星が夏向と陵介の前を通りすぎるとき頭をコツン、コツンとゲンコツした

「親御さんに任されてるんだろ?ちゃんとしろ、朝方までゲームさすんじゃねえよ、体壊したら何一つ楽しめねえぞ、楽しみ尽くすために何でもほどほどにすること教えてやれ」

〈〈〈 なんでばれてんの?ゲーム止まんなかったこと 〉〉〉

少年達は申し訳なさそうに夏向と陵介をみる

海空は小声になって自分達のせいで怒られた2人に詫びた

「俺らのせいで、マジごめんな」

「ごめん」

「ごめんなさい」

夏向と陵介は首をふった

「こっちこそ、途中で寝落ちして寝ようって言えなかったね、ごめん」

「俺もだー、寝落ちた、ごめんっ!お前ら寝不足で充血してるよ」

〈〈〈 マジか、ばれたのそれ? 〉〉〉

なんだかしょんぼりしているがモグモグと口は元気に動いていておかわりもした、心とは裏腹にテーブルの上は綺麗に更地になっていった

 

日和ってる奴はだいたい友達 ⑲

日和ってる奴はだいたい友達 ⑲

 

買い物をしたあと、おはぎを買って帰ろうと4条通を皆で歩いていた、つぶあんこしあんがどうとか、たわいもない会話を楽しんでいる

海空が斜め前を歩く最澄に声をかけた、(ん?)と首をかしげながら半歩待って歩調を合わせて海空に並んだ

「なんかさあ、俺、最澄先輩が偉いお坊さんだったっていうのはなんか納得なんだけどさ、空海先輩は違う気がすんだよな、ほんとかよって思うんだけど生きてた時期一緒だろ、知ってる?」

「あはは、そんな感じしない?でもね、ほんとほんと、カリスマ性もあるしすごかったんだよ、でもそうだな時代がいまだったらなってるかなあ?、空海ね具現化してすぐYouTuberやりたいって俺と晴明、巻き添え食ったんだよね、昔は他者に発信できる職とか方法が少なかったから僧になったって気がしないでもないよねぇ」

「マジか、ちなみにYouTubeどんな?」

「おっさん3人がただ飲んだくれて話してる動画かな」

「ははっ、なんだよそれ」

「視聴者は解んないけど俺らはけっこう楽しかったよ、コメントの相談に答えたりしてね、まあ、酔っぱらいの解答なんだけど晴明や空海の話が俺はおもしろくて、笑ってばっかりだった、思い出すなぁ、ふふっ」

話ながら店の前で会計待ちしてる皆に追いついた、店の外から夏向に(それも買ってくれよ)と言っている空海に聞いてみる

空海先輩っていまなりたいもんとかあんの?」

(急に何だ)と呟きつつも、うーん、と腕を組んで少し考え顔で宙を見た

「そだな、なれんならヒーローかな、その1つになんかいろいろ全部ひっくるめて入ってるだろ?そんなかに、な、思わね?」

晴明と最澄ものった

「「なんかいいねー、ヒーロー」」

「ふーん、先輩達そうなのか?、いまも十分ヒーローじゃね?まあ、でもなれよヒーロー協力するぜ?、俺はどっちかっていうとザコ?モブ希望だから引き立てやってやんよ?」

優弦も明澄も同意する

「俺もモブで」

「僕もモブ希望です」

それは夏向と陵介もだった

「俺もモブやるし」

「俺もモブです、協力しますよ」

脇はガチガチにカタマったようである

モブだらけであることに、かくりよ組の3人は解せなかった

晴明が手分けして持つ荷物を受け取りながら疑問をぶつける

「おい、空海、最ちゃん、現在の俺たち欲が無さすぎないか?」

ほんとだよなという空気の中、海空がつっこむ

「仏教って、欲ダメなんじゃないのかよ?教科書で読んだことあるぜ」

空海も(荷物持つぜ)と手を出しながら疑問に答える

「いやあ…ぶっちゃけある意味かなりの欲がないと歴史に名を残すほどのことはできねえと思うが?、何かやりとげるのも欲の種類の1つだろ」

晴明もうんうんと首を軽く縦にふる

「そーそ、悪い欲ばかりじゃないよ、必要な欲もあるさ、なかったら1000年前の歴史的建造物もない、それこそ現代のガスも電気もない、追求もあったらいいなって気持ちも欲じゃん?発展のエネルギー元だと思うけどな」

明澄は意外だったようだ

「そうなんですねー、欲とえげつなさってセットで悪いイメージな気がしてたけど素敵な欲もあるんですね、勉強になります」

家に向かって歩き出そうとしたとき最澄がとなりにいた空海と眼を合わせる

「残りカスのエネルギーで動いてる死んでる俺達じゃなくて、いまの俺達がなってくれるほうがいいのにね?、ヒーロー」

「そうだけどよ、働き方改革ってやつだろ、ヒーロー残業とか多そうなイメージだからな、今はなりたい奴少ないんじゃね?まずよ、敵ってさアポ入れてこねえだろ?俺だって予定たたねえし、やっぱカチンとくるのよ、勝手にくる上にだよ?当たれば即お迎えが来そうなのぶつけてきやがるし、なってねえっての、お前が苦行して躾なおせよコノヤロウだよな?、まあ、アポもとって攻撃しても宜しいでしょうか?って上品な奴はそもそも敵になってねえわな、、あっ、やっべ俺ヒーローなりたいっつったクセに超愚痴ったわ、わりい最ちゃん、ははっ」

最澄はなんだかツボにはまってしまい笑った、別にヒーローになりたいのは嘘じゃないだろうに、そんなこと考えてたんだ人間だねと可笑しくなったのだ

「今度、「来る時は言ってからこいよ」って敵に話してみようか」

「いやあ、できればそれはさ、これから敵とも付き合って向き合っていかなきゃならないあいつらに任せたいんだよな」

帰るまで待てず、おはぎのつまみ食いでわーわーやってる前を歩く皆を眺めた

最澄はにっと笑い

「うん、そうだね、じゃあ俺達は頑張ってヤジでも飛ばそうかね?」

「おう、援護する、ヤジ、得意だっつの」

とりあえず、いまは持っているおはぎは守らなければと思う2人だった

 

日和ってる奴はだいたい友達 ⑱

日和ってる奴はだいたい友達 ⑱

 

海空、優弦、明澄が生まれた第5世界には神社仏閣はない

夏向と陵介は行ってみたいという皆を連れて買い物の前に瑠璃光院を訪れた、幻想的なところがいいというリクエストに答えたつもりだ

(感想は?)と聞こうとしたが夏向も陵介も黙ってかくりよ組とうつしよ組の後ろ姿をぼんやりと眺めた、何かに思いを巡らせる彼らだけが共有している時空を見ているような、そんな静けさが心地よかったのだ、しばらくどこにいるのでもないような、そんな感覚に浸った

ゆったりと流れる時間、床に静かに揺れる新緑を6人は黙って見つめている、上下がわからなくなるのを楽しむように微笑んでいた

口を開いたのは最澄

「ねぇ、空海…思い出したことがあるんだけど、公の場の真面目そうなやり取りとは別に俺は君と本音で話す時は違う領域で魂だけで話してたんだね、これ次元のチャンネルあわせて会話してる感じなのかな、2人で気兼ねなく話す方法だったのか」

何かがきっかけになったのか感覚が思い出される

「俺もおんなじこと考えてた、静かで澄みきっている領域、互いに笑ってるな、水鏡のような床を見た向こう側に最ちゃんがいる、別空間だなぁこれ、次元変えして会話してたのか、、時代背景だったり周りがうるさかったり?現実の最ちゃんとは本音で話せない部分もあったのかもな」

それを聞いていた晴明もそんな感覚が少し思い出されたようだ

「自然体で話すのが難しい環境だったとかね、まぁ、魂だけで別空間で話せば誰にも聞かれないからな、足引っ張る奴とかめんどうな奴もいるじゃん?俺なんか更に結界まで張ってたっぽい、よほど邪魔されたくなかったのかなあ」

(それもどうなんだろうな)と3人は笑いあう

明澄はそういう話しに興味があるようで

「先輩達こういうとこくると前世が甦って気持ちが違うとかあるんですか?」

最澄アゴに指をあててふーんと考えている

「いやそんなに気持ち変わるとか、がっつり思い出すとかはなくて、いまもふんわりだよ、関連したことチラっとくらいだよね?」

空海と晴明も(そうな…)と頷いている

海空はがっかりだというリアクションだ

「なんかもっとがっつり変化欲しかったなー、不思議体験とか?」

空海がわりいなと苦笑いしながら片膝をついて床に手を伸ばす、水鏡とは少し違う温かみのある木鏡のなかで新緑が優しく揺れる

「ただこういう床な…、物質的でないものもすべて映しそうな感じ気持ちいいよ、目線を落とせばすぐにダイブできるような感覚、生きてた俺は何時間も座って宇宙と繋がっていた気がするんだよな」

後ろで聞いていた夏向が笑う

「当たってると思いますよ?俺達凡人が高野山奥の院やゆかりの地に行っても宇宙を感じるくらいだから、エアーカーテンあるのかなってくらい別の領域に入る境界線がわかる、空気違うし、陵介も言ってたよね」

「ああ、あの感じ、ここだけど、ここじゃねえって空気感はすげえよ、地上に宇宙つくった3人だよな」

へぇーっと感心している少年達を夏向が誘う

「落ち着いたらもっとまわろうね、いっぱいあるから神社仏閣」

海空は是非という嬉しそうな顔だ

「うん、いいな宇宙かー、やっぱその土地に行って感じるってクソ大事だよなー」

「だな、でもさ、こういうとこ5世界にもあってもよくね?、心洗われることも必要じゃん」

「僕も同感、神社仏閣あっていいよね、この場で感じてるようなこと大切だもん」

 

皆は話ながら阿弥陀如来の前に移動した

明澄は気になっていることがあってお賽銭を用意しながら聞いた

「僕、願いを叶えてくれるって聞いたことあるんですけど本当ですか?」

かくりよ組の先輩達が即答した

「「「くれねぇよ」」」

お賽銭を持った海空が(えー)とがっかりしている

「マジか、そんなきっぱり即答かよ」

空海は腕を組んで大きく首を縦に振った

「だって結局自分でやるんだぜ?自分に願え、それが一番早い」

最澄も大きく同意する

「間違いないよ、カミサマに頼んでも死にかけたりすんのこっちだからね」

晴明はごめんねって顔だ

「俺は生まれた時から才能あったしお願いはしたことない、するなら命令かな」

……

こいつ何言ってるんだろうという顔をしながら空海が助言する

「まあ、でも言葉は投げとけよ手は貸してくれるぞ、感覚でしかねえけど見えない力がなかったら俺は生きてるときあそこまでやれてねえからな」

最澄もそうだねという表情だ

「それは俺もそう思う天啓的なものは確かにある「こうする、とか、こうなる」って言っとくと、すべきことやヒントが目の前に現れるよね、気づけるかどうかは別としてだけど、気づけたら間違ってないって自信もって迷わず進める材料にはなるでしょ」

晴明がちょっと考え顔で聞いた

陰陽師も吉凶を占い進む先を決めたりするだろ?占いなら良いとか悪いとか出るけどそれって正解、不正解わかるのか?」

最澄がなんか思い出さないかという顔で上を見る

空海、唐に行ったの覚えてる?」

帰りに寄る店をスマホで調べていた空海が一瞬目線を上げた

「んあー、行ったのは覚えてるみたいだ」

「あの時代、船で外国なんてかなり危ないよね?嵐で沈んだらどうしようとか怖くなかった?」

スマホを操作しながら無意識に答えた

「いや?沈まないって知ってたから怖くねえよ、最ちゃんも知ってただろ?」

前世を拾う感覚でごく自然に答えが帰ってくる

「確かに俺も知ってたんだろうねその感覚はあるよ、だから船に乗った、空海はなんで無事に行けるって確信があったの?」

なんでだろう、という顔でスマホから顔を上げた

「んえ?…………えっとぉ止めらんなかったから?上手く言えねえんだけど」

晴明はあー、そっかという表情をしている

「2人はごく自然にメッセージ拾えてたんだね」

最澄が(たぶんね)と続ける

空海が、俺が、乗った時点で航海は成功する、、不正解なら背中を押されないし止められる、ヒントはふんわりだけどgoとstopの違いは空気感かなりはっきりしてたんだと思うよ、ネットとかで自分達がやってたことみると、そうでなきゃ俺も空海ももっと早く死んでたかもねって思うし」

 

後ろでその話を聞いていた夏向と陵介は同じことを思い出していた、5世界で少年達の両親に会ったときのことだ、「彼らが行くと言うなら大丈夫」あの時はなぜそう言えるのか危険なところに送り出せるのか、大丈夫だと信じて笑って見送るのか、2人はよくわからなかった、両親達は彼らが子供の頃から最澄が言うようなgo、stopを自分達も巻き込まれながら見てきているのだろう、危険察知能力が高いとは少し違うのか?不思議な気持ちで少年達の成長をみていたのかもしれない

 

夏向は思い出しながらひとりごちた

「そういうことだったんだ、やっぱり受け継いでるとこあるんだな」

陵介が隣でやっぱりと反応した

「夏向が何考えてるかわかるぜ、たぶん一緒な、俺は特に「死なないだけでケガとかはするから」みたいなこと誰かのオヤジが言ってたの思い出したよ」

ふはっ、夏向は片腹押さえた

「それ、俺も聞いたときすごい気になったよ、死なないだけって何ってね?、みんなのお父さん達たぶん無事だけど痛い目にあってるってことだよね、それで一緒に行動する俺達に警告したんだ」

ただ先輩達の話を聞いていた少年達のリアクションは他人事だった

「先輩達スゲーな、そんな便利なスペックあんのかよ俺も欲しかったわ」

「な、肝心なとこ受け継がれてないじゃん」

「僕にもないよ、誰か一人でもあれば良かったよね」

備わっている能力に自覚はないようだった

海空が何かこんがらがったようで確認する

「ってことは、先輩達は願いは叶えてもらえないが、これみろ、あれやれ、ここに行け、それ違うぞ、みたいなことで何かに助けてもらえたってことでいいか?」

最澄が(まあ、そんな感じだよね)と首をかしげて空海と晴明を見ると2人も軽く頷く

空海が所々の記憶ではこうかな?という想像もしつつ話す

「短い寿命で効率的にやりたいことクリアしてくのに人間1人の微々たる力じゃムリだろ?他人の力と見えない力を最大限借りてたんだろな、ただこっちもけっこうなことやんねえと借りられなかったんじゃねえかなと思うけど…修行とか、、まあ、想像な」

それを聞いていた海空は(うーん)とやや困り顔でお賽銭を入れて手を合わせた

「今日はお邪魔しました、ありがとうございました」

隣で手をあわせようとした優弦がつっこむ

「あれ?海空それだけ?、なんか言わなくていいのか?」

「うんいい、むずい、手貸してくれそうな気がしねえ何していいかわかんねえし、先輩達は手を貸して貰えるだけの何かをしたんだろ?、たぶん、まず自分のレベル上げが必要みたいな気するしな、だからいい」

明澄もモヤっとした表情でしばらく手をあわせていたが

「そうだね、僕も他力本願で叶えてくれるっていうならいっぱいあるけど自分がってなると自信もって言えないよ」

先輩3人は海賊王になる!でも何でもでかいこと言うだけはタダなのにとあきれていた

〈〈〈 なんか言えよ、びびりすぎだろ 〉〉〉

(叶えてくれると言えば)と夏向が空海達に笑う

「俺、空海さん、最澄さん、晴明さん関係の地は願い叶えてくれそうな空気すごく感じるんだけどな、そういう意識あるんですか?」

空海が腕組みして(へぇ)と笑った

「え?俺らそうなの?そこ全然わかんねえわ、その地には残ってるんだろうけどな、夏向は俺らにお願い聞いてもらえたのかよ?」

それはとても素直で透明な満面の笑顔だった

「はい、いま目の前にいて助けてもらってます、さすがのオールスターですよ、ありがとうございます」

目一杯感謝を浮かべた笑顔を前に一瞬で3人は真っ赤になった

いつも堂々としてるくせに、なんだか耳まで真っ赤になって照れている3人を見て陵介は力ぬいてくれたかなとほっとしたような気分になった

生前、成し遂げていることから、その時代に普通に会っていればこの人達は天才だと思っただろう接し方も変えたはず、天才はずっと天才であることに疲れなかったんだろうか?成すべきことに一生懸命でそんなこと考えもしなかったかもしれない、人が見ているところだろうが見ていないところだろうが3人ともめちゃめちゃがんばる天才だったのだろう、だって天才というだけでは天は手を貸さない、想像を超えた先人達の努力の上に自分達は立っている、裏防衛省の皆は彼らに関わっているうち、ここにいる間は素直に照れ、笑い、怒り、喜び、口汚くも、遊び、美味を、心のどこかで自分を癒し力を抜いて楽しい時間も過ごして欲しいと思っている、1000年以上前から来てくれたのに、もてなすどころか守られている、足手まといにしかならない自分達が毎回現場について行っては疲れも倍増のはずだ、それでも「いつもありがとう」と言ってくれる天才達、同等とまではいくはずもないがせめて自分のことくらい何とかできるように成長したいところだ、偉人で天才だからって頼りっぱなしで当たり前なわけない

(よし、後ろじゃなくて隣で戦うんだ)、と陵介は手を合わせた

晴明がそれに気がつき

「陵介、なんか願うつもりか?いま1000円入れただろ、晴明神社には50円だったじゃん!許せねえ」

「そうなのか?怒っていいぞ晴明、東寺や神護寺の時はどうだったんだ?50円か?正直に言ってみろ陵介」

最澄が意地悪っぽく陵介の肩に手を回した

「1000円の願いって何?どんなの?聞かして?俺達に直に頼めばよくない?」

(みんなに頼んだら意味ねえんだよ)モゴモゴと別に何もとごまかす何も言えない陵介に夏向は少々、心配して

「陵介、いつも小銭入れてるとこしかみたことないよ?どうしたの?札の願いって重さが違うよね、1万円とかいくともう命に関わるっていうか」

いったいどんな基準なのか、その大袈裟さにまだ手を合わせてなかった優弦は早々に何も願わず済ませた

「何?命って、神社仏閣なんか深けえ」

「俺ら馴染みねえからわかんねえけどさ、でも料金表あったほうがはっきりしてて良くねえ?」

ダメでしょ、という顔で海空を横目に見ていた明澄が無邪気に聞いた

「で、陵介さん1000円で何言おうとしたんですか?」

〈 ああ、もうっクソっ、俺の決意が… 〉

もう台無しだと泣きそうな気持ちになりながら陵介は決意(言い訳)を焦りつつ考えた

「…明日のみんなの朝ごはん、エッグベネディクトを上手に作る宣言しようとした…かな」

「「「「「「「マジか、あれ美味いよなー!いまから楽しみだ」」」」」」」

さて、行くぞと皆上機嫌だ

食べ物に気をとられ?、それ以上突っ込みはなかったことに陵介はほっとした

〈 まあ、いいか…美味い朝メシ食って笑ってくれれば、それも 〉

とても小さなところからクリアしていく陵介だった

 

 

 

 

日和ってる奴はだいたい友達 ⑰

日和ってる奴はだいたい友達 ⑰

 

(了解)と美凪は明澄の前に立った

海空と優弦は壁側に並んでいる1人掛けソファで着替えながら様子を見ようと移動した

 

「えっとそうだな、、利き腕の肩に手をのせていい?」

「うん、よろしくね、僕はどういう状態でいればいいかな」

そばにいた夏向が説明した

「5世界で丞先生と製作したもののこととか頭に浮かべてもらえるかな、美凪くんの能力はさわってる相手が関わった物の工程をスキャンできるんだ、すぐ3Dデータにして作れるようにシンプルにはっきりだとすごくいいけど…難しいよね」

「いえ、僕はそういうの得意かも、美凪くん0世界の状況から優先順位が高く、取り急ぎ必要だと思ってるものが3つあるんだけど」

「ああ、だったら1つづつ頭に置いてくれればいいよ、1つスキャン終わったら肩を軽く叩くから次を出してもらうって感じでいいかな」

「夏向さん、優先順位勝手に決めてごめんなさい、急いでるなら絞ったほうがいい気がして」

「ううん、むしろありがと、助かるよ」

明澄は美凪に向き直り眼を閉じて1つ目の工程を鮮明に思い浮かべた

美凪は軽く肩を握った

「そのまま、じゃ始めるね」

美凪と明澄のまわりの空気が揺れて肌にまとい触れる感じがした、着替えながら陵介と話をしていた海空と優弦も変化に気づいて空気が揺らいだほうを見る

美凪は伏せていたペリドットのような瞳をゆっくりと動かす瞳の中の光が何かをとらえた、さわっている肩のやや上に目線をそらす

「嬉しくなるくらい鮮明だね、綺麗だ、人によってイメージのしかたってこうも違うんだね、しかも残像をまったく残さず次にいく、やりやすいな修正いらないよ」

眼を閉じたまま明澄は笑った

「イメージあってそうだね良かったよ」

「ああ、最高だよ細かい部分まで拾えたし終わったよ、繋がり切るね」

バチっっ、、皆驚いて肩をすくめた

美凪が手を離した瞬間、部屋中に響くほどの音と稲光のようなものが走った

〈〈 いってーっつっ 〉〉

「あー、ごめんな、俺、能力使うとなんか静電気すごいんだよ今日特にやばい!」

「夏向、いったん美凪くんが取ったデータ落とすか」

「そうだね、ちょっと行ってくる明澄くんも着替えてて」

そう言って3人は部屋を出ていった

 

明澄も壁側のソファに座って着替え始めた

渡された紙袋の中は意外と品数が多かった、ジャージ上下、Tシャツ、ハーフパンツ、コンプレッションレギンス、組み合わせはいろいろとできそうだ

先に着替えていた2人は制服を畳みながら話す

「下着とかTシャツとか買い足しに買い物連れてってくれるってよ、あと神社仏閣も連れてってくれるって楽しみだな」

「だよな、あ、スニーカーも5、6足用意しろってネット見て選んどくか、準備できしだいトレーニング行くって言ってたよな」

「おー俺ら強くなって魔法使えるようになれんのかなー」

〈〈 だといいよな、ははははっ 〉〉

「2人とも笑ってるけど靴5、6足もいるってやばくない?どんなトレーニングなの不安じゃないの?」

海空と優弦は顔を見合せた

「「いや?ない…」」

「むしろ楽しみなんだが?なんで不安?なぁ?」

お前不安か?という顔で優弦のほうをみる

「ああ、ほんとな、なんでだよ?お前運動神経いいじゃん」

明澄はそうだったと思いながら

「君ら未知なことに不安感じるタイプじゃないからね、、辛いの想像しないのね」

2人とも(う~ん?)という顔だ

「魔法教えてもらうのに筋肉とかエグいトレーニング必要ねえだろ、心配なくね?」

「そーそー、だとしても明澄はどっちかいえば武器製作とか手伝いたいんだろ?そっちメインでやればいいじゃん?俺らコツつかんだら教えるしさ」

「まぁ、どっちみち僕はそうなるだろうね」

(だな)頷きながら海空はソファに座って何か一点を見つめた

「な…明澄、勝手な頼みだけどさ、できるだけ協力してやってくれよ、危ねえとこ行ってる先輩達みると、なんだかな…落ち着かねえってゆうか」

服に腕を通しながら一瞬動きを止めた

「うん、わかってるよ、こっちの世界全然魔法ないみたいだし、そういう人がただの普通の武器持って迎え撃っても相手が魔法使えるなら絶対にかなわない、いま敵が少なくて滞在時間も短いのは向こうが開くゲートがこちらの世界と相性が悪くて大勢でこれないとか、理由があって長く開けないんだろうけど、調整が上手くいったら一気に攻めてくるかも、やばいよね」

「その通りだよ」

声に反応して3人はドアのほうをみた

「夏向さん…」

戻ってきた夏向と陵介が立っていた

「いま、俺達ね空海さん達に同行したりするけど足手まといなだけなんだ、、素手でとか銃とか剣とかあったとしても冷静に考えて無理だなって…一瞬で消されるなって思う、でも急に超能力のようなことできるわけないし焦るばかりだよ」

「明澄くんはさっきスキャンの時そのへん考えてくれたんだろ?サンプルできたらムダにはしねえよ使いこなしてみせるからさ、こっちにいる間協力たのむぜ、もちろん魔法習得にも協力するからさ」