日和ってる奴はだいたい友達 22

日和ってる奴はだいたい友達 22

 

防衛省に到着したとき合宿の荷物の積込は半分ほど終わっていた、かくりよ組も手伝いをしておりついた早々ヤジを飛ばしてきた

晴明が(ああん?)と意地悪く笑いながらからかう

「おせぇよ、夜更かししてんなよ」

空海は荷物の上に頬杖ついて呆れている

「せっかく一緒に飛んでやろうと思ったのに寝不足だからダメだってよ」

「「「えええ、マジか」」」

0世界は魔法圏ではない、裏防衛省の本部がある京都は現在侵略者対策で無許可で能力者や化け保護猫が飛べるが他県は飛行許可が必要だ今日の移動に合わせ関西圏すべてに許可を取り久々に飛べる予定だったのだ、だが寝不足の体を気遣って悠一郎がNGを出した

最澄はなだめるような表情でため息をついた

「たいしたことないのにって思うかもしれないけど何かあったら皆が傷つくだろ、君達も止めなかった人もね、そこは解ってあげなよ?」

(そうかもな…)とシュンとしている少年達に夏向が元気づける

「でも、ほらヘリも楽しいかもよ?初めて乗るでしょ?藤堂さんと兄さんのヘリどっちで行く?」

「「「藤堂さん」」」

天星が(その即答ナニ?理由いえや)とにらんでいたが少年達はめんどくさいので荷物で顔を隠して残りの作業を手伝った

 

だいたいこれで終わりかというところで水を飲んでいた海空が近くにいた藤堂に声をかけた

「そういえばどんなとこ行くんだ?聞いてなかったわ」

(ん、こんなとこ)最終チェックをしていたタブレットで画像を出した

和歌山県だよ、BMODの作業場があって美月家桜時家のじいちゃんばあちゃんもいる町だね、凄いいいとこ、山、海、ほら最近改築した体育館もある、良いだろバスケもできるぞ」

〈〈〈〈〈〈 おおおー 〉〉〉〉〉〉

藤堂の近くにいた者達は肩越しに画像を見て喜んだ

荷物の反対側から夏向と陵介が頬杖ついて話を聞きながら思い出し笑いしていた

「藤堂さん、鼻から牛乳出したの思い出しません?」

藤堂は〈あれな〉という顔で表情を緩めた

「あっははは、あったな改築前のイベントな、あれはヤバかったわ」

明澄と優弦も水分を取りながら荷物に体を預けた

「なんの話ですか?」

(あれな?)と皆も集まっていた

陵介がだらしなく荷物の上にもたれ両腕を滑らせながら

「年明けすぐくらいかな、改装前に建物少々汚してもいいしってBMODの名目忘れたけどイベントすることになってさ、皆忙しかったのもあって空海さんに企画頼んだんだ、そしたら「口に牛乳含んで笑うな」ってイベントになっててクジで笑ってはいけないチームと笑かしにくチームになって開催されたんだけど、どっちになってもバツゲームだった、もう超苦行」

優弦が首をかしげた

「んー、笑かす係が当たりな気がするけど違うのか?」

夏向が自分を指差しながら

「これ、あくまで俺目線だけど笑っちゃいけないほうで良かったと思った、こらえきれなくて笑いまくったんだけどここら辺だけで済んだから」

そう言って鼻のあたりから胸のあたりを人差し指で円を描いた

海空がなるほどと

「あー、なる、笑われた側は広範囲に牛乳を浴びるってことか?」

晴明が思い出して鼻息を荒くする

「そだよ、俺と最ちゃん笑かしにいくチームで地獄よ?笑った奴の牛乳全身にガンガン浴びるしさー、最ちゃんは「吹き出すな飲めやあぁああーっ」てらしくもなく怒こり出すし、でも一番納得いかなかったのは空海の一人勝ちだぜ、こいつ1人だけ笑わなかったんだよな、言い出しっぺのクセに無傷じゃん、イラッときたわ」

そうだと言わんばかりに最澄が拳を握った

「しかも「なぁ、笑わせてくれよ、お前らがつまんねーから牛乳がぬるくなっちまった」って涼しいドヤ顔みた時、マジ苦行っ、わざとドヤしたでしょなんかそういうとこあるよね」

陵介も同意した

「そーそー空海さんのドヤ顔がムダにイケメンで牛乳臭い自分が悲しくなったんだよなぁ」

「思い出し怒りすんなよ、あんときもムカつかれてよー、皆にケツ蹴られたんだよなー、くーかいなのになぁー俺」

最澄と晴明が(コノヤロ)と膝でぼふっぼふっとお尻を蹴ろうとする、空海はごめんってと笑いながら側にいた優弦を盾にした

クスクスと笑っているところへ軽く走ってくる足音が聞こえ皆その方向を見ると悠一郎が大きな冷蔵ボックスをかかえていた

「向こうでも多少用意してるけど、到着してもいろいろやることあるから食料も持ってったほうがいいかと思って、だいたいこんなもんかな?」

(あ、そだ)明澄が悠一郎に駆け寄る

「おじさん、行く前に確認しておきたいことがあって、BMODで魔法のような能力がある人いれば、どんな力があるのか知りたいんです、アイテム製作の参考にしたくて」

「あ、それなら、陵介、PC開ける?俺んとこアクセスして」

それを耳にした詩音がスマホを操作する(ヒナリー?ちょっとこっち来て…あ、肉持ってこっちきてんのね、OK)

悠一郎が陵介の横に立ってPWを片手で入力して画面上の表を目線で追った(これだね…)明澄の方に目線を移し

「こっちの世界はそういう力ない人のほうが多いでしょ、まあウチは死んでる人相手にしたりちょっと変わってるから入社する時に一応確認してるんだ、ほとんどいないんだけど…ヒーリングできる人が何人かって感じかな…あと第6感っていうのかな…」

藤堂が手を挙げて

「俺もそうです、ちょっと和らげる程度ですけどヒーラー的な」

それを聞いて明澄がスマホにメモる

悠一郎と陵介はデータをスクロールしつつ確認している

「えっと、、どっちかって言うと「私、オバケ見えます」的な人ばっかりだけどヒーリング能力は藤堂くんと同じくらいのレベルの人があと7人いるね、変わり種は美凪くんのスキャン能力とか詩音の…」

悠一郎はそう言いながらPCに向かう中腰の姿勢から詩音を見上げた

詩音は少し恥ずかしそうに

「バカ力というか怪力?があるんだ私、通常時がそれなの、子供の頃は加減がコントロール難しかったけど今は意識しなくても加減できてるかな、陵介を抱きしめる時は手元が狂っちゃうんだけど」

〈 抱きしめられてませんっ! 〉

陵介がほんとにやめてくれという目線を送った(誤解されるだろうが、そういうこと言うなマジで)怒るぞと手で制止した

 

明澄はフムフムと興味深げにスマホにメモを取り続けた

「例えが難しいとは思いますが詩音さんどのくらいの力ですか?」

「うーん、コイン半分に潰せるとか、あ、このヘリは普通に片手で押せる、のと、、殴るとコンクリートボコれるかな」

(((((((( いや、驚くわ…かなりのもんじゃね? ))))))))

詩音に呼ばれた朝日奈が手を振りながら冷凍肉を持ってやってきた

「詩音パイセン、何すか?あ、これ持っていってもらう肉っす、どこ入れます?」

「ヒナリー、自分の能力のこと話してだって?」

藤堂が開けてくれた冷凍ボックスに肉を納めながら皆の顔をさらっと見回す

「マジっすか?、誰よりもクソっすよ、ショボすぎてガッカリする準備は抜かりない感じで了承?」

朝日奈はまわりをもう一度見回した

どんな爆撃も大丈夫だという顔で皆、朝日奈を見返した

……

「人を、思う方向に向かせることができるっす…1日にせいぜい2回くらいっすけど」

(うん、、確かにショボい…)という空気がその場を支配した

海空は珍しさというか共感できる部分があり

「俺も瞬間移動できるんだけどさ、日に1、2回くらいなんだよ、回数制限あるとマジ使えねえよな、下手すると戻れねえの、ぼっち限定で瞬で行きてえとこあんまねえし」

明澄がメモしながらはっとして

「そう言えばそうだったね、海空の瞬間移動、全然使わないもんねえ?忘れてたよ」

優弦も(そう言えばな)と思いながら朝日奈のほうを向いた

「ところで朝日奈さんさあ、そのチカラ役にたったことあんの?」

問題はそこである、役にたたなそうだとそこにいた大人枠とされる人達は聞いていいのかためらわれた質問だ

朝日奈は首が落ちそうなくらい首をかしげ(うーん)と言いながら腕組みをして記憶を探った

「学生の頃、友達が好きな人を振り向かせたいって言うから、前を歩いてた彼を、こっち向かせてあげたことくらいっすかねー」

〈〈〈 それって振り向かせる意味あってる? 〉〉〉

明澄はスマホにまたメモをしながら悠一郎に言った

「チカラが役立つかは別として、そういう人のほうがアイテム使用できるまでのスピードは0の人よりは段違いに速いと思うんですよね、使用時に必要な強い集中するチカラも無意識に出してるはずですし、ストーン使うスイッチはそれありきですから」

悠一郎は顎に手を添えながらなるほどと再度PCの画面に視線を落とした

「そうだね、朝日奈さんのチカラだって自分の首じゃなくて他人の首を振り向かせるんだもの、意識してなくても相当な集中力なんだね、改めてみんなの異能確認再度してみるよ、少しでもあるよって人から先にどんどんアイテムサンプルできたら試していってもらおうね」

夏向と陵介も頷く、夏向は自分が異能使用時はどうなのか思い出そうとしながら一応自分達のことも申告した

「いまのところあとは、、俺と陵介は前に言ったとおり、あ、そうだ、そういう力じゃないけど姉と朝日奈さんは体術にかなり長けているよ、他の人も前線に出る職員は時間作って毎日訓練はしてるんだけど特に2人は凄いっていうか」

明澄はスマホから顔を上げて

「たとえば相手が魔法無しなら多少やりあえるということですか?」

夏向は指で頭をかきながら少しうーんという表情で

「そうだね、、2人は可能性あるかな…他の人達はもとが戦い慣れてない人達だからね、どう答えるべきか迷うよ、本格的に取り組んでくれてる人もいるし、美凪くん開発のバトルゴーグル着けて実戦に近いトレーニングは多少できてると思うんだけど、現実には怖さも違うしね」

(そっか、最初はやっぱりあれかな)と明澄はアイテムを想像して呟き

「時間とってもらってありがとうございました、詩音さん、朝日奈さん、アイテムサンプルできたら試してもらっていいですか?」

「「もっちろん」」

詩音と朝日奈は居残り皆を見送った