日和ってる奴はだいたい友達 23

日和ってる奴はだいたい友達 23

 

ー 和歌山県 ー 美月家が所有する土地の山の中腹にある宿舎として使用する建物の前にやってきた、山の麓あたりには裏防衛省の作業場がある場所で美月家桜時家の祖父母が住んでいるエリアでもある、山も海もありトレーニングにはもってこいの場所だ

 

荷物を下ろしながら海空が空海に疑問だったことを問う

空海先輩、藤堂さんが筋トレとかもするって言ってたんだけどさ、魔法に筋肉って必要?関係あんの?」

「筋肉と体幹があれば大概のことできんじゃねえの」

荷物を運びやすいように振り分け作業していた最澄が荷物の間から顔を覗かせる

「フィジカル強化は絶対必要でしょ、でもなぁ、また話すけどさ、俺達、魔法が謎なんだよね…とりあえず迅速に運んでよ、終わんないよ」

「「うす」」

荷物を持っていこうと体勢を直そうとしているとざわざわと人の声が聞こえてきた、袴姿の人やジャージ姿の人が荷物の前に集まってきた、(コンニチハー、俺達も運びいれます)悠一郎が声をかけていた神社の人達らしかった、荷物の振り分けをしていた最澄が(お願いします)と言って指示を出した、ずっと人が使っていなかった建物だったため物がなく、持ってきた荷物の量もかなり多かったが人手が増えた分どんどん荷物は無くなっていく

「「お疲れー」」

ドリンクをいっぱい入れた袋を持って優弦と明澄が海空のところへやってきた

「おー、何の手伝いだったんだ?」

「俺、メシ作ってる、もう食えるよ」

「僕は陵介さんと近くの作業場を使えるようにしてる」

最澄がドリンクを受けとりながら疲れたなという顔をする

「まあ、でももう終わりそうで良かったよ」

晴明と空海がドリンクをもらおうと近付いてきた

他のことをしていた夏向も駆け寄って来た

「皆、お疲れ様、食べたり飲んだり休憩してよ?」

「「「「「「お疲れー」」」」」」

(そうだ)夏向はきょろきょろして誰かをロックオンして呼びにいった、数人に声をかけ、皆の前に戻ってきた、老夫婦2組と20代後半くらいの男性2人を連れている

「紹介するね、こっちから、ウチの碧(あお)じい、りおばあ、陵介んちのハルじい、みかばあ、陵介の上のお兄さん浬久(りく)兄、は、美月神社を管理してくれてる、下のお兄さん蓮(れん)兄は桜時神社を管理してる、じいじ、ばあばや神社の人達もいろいろ協力してくれてるんだよ」

「「「「「「しあす!」」」」」」

あちこちから(よろしくね)と返事が返ってくる

あちこち手伝っていた陵介が冷蔵庫設置したから買い出しも必要だと寄ってきた

人手も増えたところで荷解きや買い出しに別れて作業を再開する、宿舎と陵介の作業場があるエリアは山の中間くらいに位置しヘリが着陸したのは山のてっぺん付近にある美月神社の敷地内だ、車で荷物を宿舎前まで輸送しては下ろす、を繰り返していた

「ちょっと待てえぇええ!なんだそれはああぁあああ!」

「「「また、あいつかよ、マジうっるせえなっ」」」

かくりよ組の3人は天星がまたなんか怒こってんのかよとうんざり気味にもう振り向かなかった

空には化保護猫のタコくんといっちゃんがストーンをいっぱい詰めたバックパックを背負って運ぶ手伝いをしていた

「夏向あぁー、化け猫飛んでっし、ついてきてんじゃねえか!お前知ってたのか?」

何やら怒っている兄のもとへ駆け寄る

「兄さんのヘリにくっついてるな、とは思ってましたけど、報告が必要でしたか?」

「住民の皆さんが驚かれるだろうが、ウチはただでさえちょっと怪しい集団なんだぞ、あんなでっかい猫が飛んでたらまずいだろう?」

「…うーん、かわいいネコちゃんねって言ってくれましたよ?ウチと関わり深い土地だからですかね…」

最澄に夏向のとこに持って行ってと言われて猫達が夏向と天星に近寄ってきた

グルグルゴロゴロ言いながらいっちゃんが夏向に頭突きしてくる、タコくんは天星に頭突きをして右から左に往復して顔を擦り付けてくる

「ぶぶっ、まっ…、ぶふっ、いま顔サイズでかいって、ばっ…」

夏向はいっちゃんのバックパックを外す

「ありがとう、いっちゃん、兄さん、もふもふ遊んでないで背中の荷物おろしてあげてください」

天星はクリームパンのようなお手々で抱きしめられながら納得いかなそうだ

「ええ?俺?遊んでねえし違うだろクソっ肉球をどけろ、ぷにっとすんな、はなせよ荷物おろせないだろ!」

右のショルダーを外そうとすれば右手を少し上げ、左側を外そうとすれば左手を上げる、外しやすいように動いてくれた、バックパックをおろすと両手を揃えて座りシュルシュルと普通サイズに戻った

〈 クッソ!クソっクソっ、、なんなんだよこのクソかわいい生き物はよ?心臓が持たねえ、崩れ落ちねえでいるのがやっとだ、とっ、尊いいいっ クソ 〉

兄の背中が甘い雰囲気だったのでもう怒ってないようだと夏向は早々に作業に戻ろうとしたが兄が呼び止めた

「こっちでのこいつらの寝床はどうなってる」

少し振り返って

「兄さんが用意してあげては?この子達、兄さんにお願いしたいみたいですよ」

「そ、そうか」

そう答えておけば自分達が用意するより遥かに立派な寝床になるであろうことを夏向は知っている

〈昔からそう〉

少しずるいかなと思いつつも時々利用してしまうのだった