日和ってる奴はだいたい友達 ⑬
朝ごはんのあと腹ごなしに散歩をしてから5人は裏防衛省に向かった、もともとは美月家が所有する屋敷を改造した裏防衛省の外観は美月家の旧館側に似たレトロな洋館だった入口を入ると建物中央までの広い通路がある、中に入ると現代風の内装で1階はやや長方形のフロアをキャビネットや観葉植物でいくつか部屋として仕切られている、中央のフリースペースは大、中さまざまな大きさのモニターがあり飲み物やソファもランダムに置かれている
5人はフリースペースのところで立ち止まった、Tシャツやジャージで腕章をつけている人達がザワザワと働いている
優弦はきょとんとして聞いた
「なんで皆ジャージなんだ?部活かよ」
夏向が苦笑した
「うち、あんまり国からお金でないから…でもいま侵略者問題で味方を区別する必要とかあって着てもらってるんだ」
隣で陵介もタメ息をついた
「かっこいいブルゾンくらい作れればいいけどさ、高校の同級生のつてでジャージ類だけは格安で売ってくれたんだよ」
誰かと携帯で話していた夏向が陵介に行くよと声をかける
「おお、ちょっとここで待っててくれ俺達も着替えてくる」
「かくりよ組、上にいるみたいだから連れてくるね」
2人を見送って職場を見回した、皆がジャージのせいか学祭前を思い出す。
裏防衛省は表防衛省と違い規模がとても小さく、おかしな現象全般を引き受ける、ほとんどが1度死んだ人を相手にするなど綺麗な仕事はあまりない、そのため人気がなく入ってくる人は少ない常に人手不足だ、ざっくりと担当はあるが皆何でもする、五芒星(晴明デザインでそうなった)の腕章を付けているものは有事の際に最前線に出る印だ、その腕章もほとんどの職員が付けている、動きやすい軽装をしているのはそのためでもある、1年くらい前までは腕章はなかった他世界から侵略がなければ防衛省といっても戦うことはなかった防衛部隊もない、表防衛省は0世界の人間が相手というので活動する組織である、他世界からだったために裏防衛省が受け持つことになってしまったのだ。
明澄が吹き抜けをなんとなく見上げながら呟いた
「なんか…今更、実感わくよ…0世界に来たんだね」
海空と優弦も上を見て頷く
「ああ…魔法がないよな」
「何も浮かんでねーのな?」
少年達は0と5の違いを探すようにあたりを観察した、ここにくる道すがら教科書で見た車や自転車、飛んでる人がいないこと部屋の中は比較的同じに思えるが携帯電話やPCが違うこと、その少しの違いが不思議な気持ちにさせた、別の時空で生きている人達がいる、些細な生活感から不思議な繋がりを感じる、それが何か解らないが心地よいのだ
ガヤガヤと遠くから声がしているのに気づき声の方に目線を送る、2階からフリースペースへ降りてくる階段に夏向達の集団を見つけた、あそこだよと案内しながら降りてきて会話をしながら少年達の前に近付いて来た
その時、少年達は同じことを思っていた
〈 はは、気持ちわりぃ…ってか、こいつが俺だってわかる 〉
かくりよ組の3人も同じだ、何故なら近付きながら自分の前に場所を入れ代わったからだ