日和ってる奴はだいたい友達 ⑮

日和ってる奴はだいたい友達 ⑮

 

あーだこーだ言い合い賑やかな様子を眺めていた最澄

「こういう時代に生まれてみたかったな…あ、いや生まれてるんだったね、ごめん」

そう言いながら明澄を見た

明澄はクスッと笑う

「具現化できてるなら変わらない気がするんですけど?でもなぜお坊さんにしなかったんですか?」

「だってもう死んで終わってはいてさ、生きてた頃の記憶は所々しかないし、覚えてても同じはないかなー、こうしてても1秒前と同じ自分も無いしね同じでなくていいのが時が過ぎ行くメリットでしょ、空海達が高校生イケメンにメタモルフォーゼして青春したいってのに賛成だよ」

空海最澄の肩にひじをかけながら話に入る

「だよな、最ちゃん、せっかくのアディショナルタイムだ、前と同じって選択肢はないぜ、な?晴明」

「楽しまないとね、前のおっさん具現化の時、姿が天星寄せだったから変えたくてさ、怒ってばっかの奴はやだからな」

「いや、おっさんで寄せんな、おっさんじゃねぇわ まだ28だ」

「そうなのか?わるい、俺らの時代寿命短いからおっさん認識だったわ」

 

雑談に笑いながら、最澄が記憶と言ったことに反応した海空

「一応、言っとくと俺ら3人前世の記憶ないからな、んで記憶ないのは俺らの意思だから」

その場の全員どうしてだという顔をしている

 

5世界の人間には前世の記憶がある、生まれた時からゆっくり思い出し中学生ぐらいから記憶が甦るスピードが速くなる、それはもちろん素晴らしい記憶ばかりではない、ゆえに記憶に苦しむ者も少なくなかった、その苦しみを取り除くために生み出されたのが前世をデリート処理する治療である、メンタルヒーリングの魔法を得意とする海空の祖父が考えた治療で今は海空の父も土御門クリニックでおこなっている、記憶のスピードが速くなる前に止めることも可能で少年達は記憶を止めることを選択した。

 

ランダムに置かれたソファにいい加減な座りかたをしつつ優弦が口を開いた

「生まれかわり出会う人間は土地、時代、何かで触れ合っている可能性が高いって聞いて前世では俺が2人を傷つけてるかもしれねぇし、逆もあるかもだろ?変わらず付き合える強さが自分にあんのか怖くなってさ」

明澄も首を縦にふる

「僕も小5くらいになる頃凄く悩んだ、変わらずにいられる強さがないかもしれないと思うと怖くて辛くて、でも海空にも相談したらあっさり記憶を止めるって決めてるからって言われて…予約までしてて」

海空はどこかで少しでも不安を感じるなら消すとわりと早く決断していた

「この時代の現在の選択権は俺が持ってる、なら、前世の記憶はいらない現在を大事にするって決めた、それが結果、過去も未来も喜ぶ選択だと思ってるんだが…」

 

この治療が広がり始めたのがまだ最近の話だというのもあるが、5世界に生まれたら自分のカルマも人のカルマも見えてしまう、それには意味があり、そこを乗り越えてこそという考えも根深く、記憶をデリートする治療をおこなうことは逃げであると嫌みを言う人もいる、歴史に詳しい識者によると、5世界に戦争がないのはカルマが見え背負いたくないからだ、残すべきだという意見もある

 

「俺と明澄はさ、なんか消すことに罪悪感あったんだよ、でもそれに囚われて現在を最悪にしちゃ意味ねぇかなって思ったしな、お前の答えで吹っ切れた感じだったよ」

最澄がなんか大変だったんだね?という表情で

「記憶なくても大丈夫だよ?俺達わりと有名人だからネットで検索すると大抵のこと解るから、ね?空海、晴明」

「おお、便利な世の中だぜ、でもさ、顔あってる?もうちょっといいのあっただろって思うときある」

これはゆるすまじと最澄が鼻息を荒くした

「あっ、それな!解る俺なんかおじいちゃんぽいのとかさ!悔しいのがズルいよね!晴明ばっか全部イケメンで出てくんの、晴明神社の像と全然違うじゃん!」

「え?俺ぇえ、、たぶん2次元で想像したらイケメンだったんだろ?…ってか、おそらく俺ら冗談抜きで現在がピークだと思うんだが?」

空海最澄も同感である

〈〈〈 具現化に感謝してる 〉〉〉

空海、俺達生きてる頃がんばったよね、平安女子はNGだったけど現代女子にはモテてもいんじゃないの?」

「十分我慢したと思うぜ、ちょっとくらいモッテモテ経験したいよな」

(うぇーい) 3人はハイタッチした

皆で笑っているところに侵入者出現の緊急警報が館内に鳴った。