日和ってる奴はだいたい友達 ⑯

日和ってる奴はだいたい友達 ⑯

 

オペレーターからの館内放送が入る

 ー 無動寺、鞍馬寺石山寺付近に出現、かくりよ組と職員は現地に向かってください ー 

 

ちょっと行ってくるとあわただしくかくりよ組と数人が出て行った

「なぁ、大丈夫なのか?」

こうして出動していく姿を見るとなんでもない日常が急に非常時に変わるのだと実感がわいた、急に不安が沸き上がる

夏向は呟いた優弦の背中をぽんと叩いた

「大丈夫だよ、地上からみたいだし強いのじゃないと思うから」

強いとか弱いとかそんな問題じゃないのは解っている、この状況になってから見送るということがものすごく怖いのだ、もちろん自分が行く時も不安と恐怖に苦しくなる気をつけたからと無事は約束されていない危険な場に送り出すのだ、慣れるはずもない。

ここにいる誰もが、まだ本格的ではないであろう侵略を今のうちに止められたらと思わない日はない

陵介に行こうと肩を叩かれてはっとして夏向は息を吸う気を取り直して前を向いた

「さぁ、藤堂さんたちのエリアに行こう紹介する、君達を待ってるよ」

 

オープン階段の一つを2階に上がっていくと通路なのか部屋なのかよくわからないところに出るフリースペース側の通路の手すりの方にもオペレーター席が並べられているからだ、そこから2mくらい後ろに長方形のオフィスがある、かなりごちゃごちゃしており通路確保のためか "ここからはみ出るな"と書かれたガムテープが床に張られている

 

夏向がある人と目を合わせ手をふった、それに気づいた人物はもう2人誘い合わせて男性2人と女性1人が近付いてくる

見た感じ清楚の塊のような美女が手を差しのべた

「お待ちしてました、自分、会えて光栄至極っすよ、朝日奈 凛香(あさひな りんか)っす!よろしくっすぅ!」

少年達に次々とハンドシェイクしていく

「「「あ…ああ、よろしく…」」」

空気を読んだ陵介がフォローする

「朝日奈さん、ジャージが着物かドレスに見えるくらい清楚な顔面でその勢いとキャラは引きますって」

「あは、いつも第一印象引かれるとかヤバイっすね、兄弟私以外4人男で話し方移っちゃって気をつけてるっ…んですけど」

陵介が苦笑いしながら紹介の続きをした

「で、こちらが 藤堂 瑠衣(とうどう るい)さん、ちなみに夏向の兄さんの同級生だ」

藤堂がにっこり笑って右手を出した

「俺はこっちにいる間かなり関わることになるよ、よろしくね」

「そして、君らと同級生、こっちの桜香高校に通ってる、んで、ここでバイトもしてもらってる 是枝 美凪(これえだ みなぎ)くんだ」

「よろしく、美凪でいいよー」

3人も名前を言いながらハンドシェイクした

陵介が通路と呼べなそうな通路の先を指差す

「ちなみにこのカオスの向こう側がリープブレスとか作ってる俺達の作業部屋で、美凪くんはそこでバイトしてくれてるんだ」

藤堂達の自己紹介の間に荷物を取りに行っていた朝日奈が紙袋を3つ持って戻ってきた

「陵介さんの作業部屋でこれに着替えてほしっす、で、今着てる制服は自分に預けてほしいっすよ」

「ちょっと細工するけど悪いようにはしないから安心して?」

そう言って藤堂が微笑む

少年達は解ったと頷き荷物を受け取った

陵介が藤堂と朝日奈にまた後でと手を上げて作業部屋を指差す

「さっ、じゃあ着替えに行こか」

 

人が横切ったり席や荷物があったりと少々歩きにくい通路を進み部屋に入る、入って右手には10人くらいが作業しており、お疲れという声が飛び交う軽く答えながら左手のミーティングルームに入った

 

部屋の真ん中には大きなテーブル席があった少年達はとりあえず渡された紙袋をのせる

壁側にならんでいる1人掛けソファの一つに美凪バックパックを置いて振り返ったテーブルの上で紙袋の中を覗いている皆に近付く

「もしかしてその中ってさ…」

海空が顔を上げた

「ああ、期待裏切らねーな、やっぱ俺らもBMDジャージにされんのな」

優弦がため息混じりに

「な…まぁ黒ってのが救いじゃん?」

明澄は胸に当ててサイズを確認している

「そうだよね、エンジとか明るい青とかだと人選ぶもんね」

イスに座り脚を組んだ上にほおずえをついて夏向はあきれ顔で言う

「でしょ、兄さんは斜め上からのセンスでNGカラーばっかり選ぶから俺だけでは止めきれなくて皆が死ぬ気で止めてくれて掴んだ黒だよ」

「そーそー、外歩けねぇ色ばっか選ぶから本気で心配になって眼科連れていったら正常だしな、マジ意味解んなかったわ、お前の兄貴」

やれやれという空気が蔓延した

あ、そうだと姿勢を変えた夏向

美凪くん、着替える前に明澄くんをスキャンしてもらっていい?」